スパイダーバース スウィングし 跳躍し 反転する 思春期少年の世界①

  ブログを始めて下書きだけ書いては消してを繰り返していたらそのまま何も投稿することなく数ヶ月が過ぎていました。僕はそういう人間です。生きていてごめんなさい。

  何はともあれ「このままではまずい!」と思い、「ふせったーで映画の長文感想書くぐらいならここ使えばよくね!?」と気づいたので試しに書いてみようと思います。

  初めてのちゃんとした記事。なんだか緊張しますがマイルスくんのように勇気を出して踏み出そうじゃないか……!という無理矢理な導入で今回は スパイダーマン:スパイダーバースの感想をまとめてみます。

 

 

  スパイダーマン

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  スパイダーシリーズ。

  なんだか色々なものがあるのでいきなりスパイダーバースを観ても大丈夫かな?と不安な人のためにスパイダーマンという作品をザックリ説明すると

  普通の少年が変なクモに噛まれて急に身体能力が向上!伯父の死によりその人間離れした能力を正義のために使うことを決意した主人公は色々悩んだり挫けそうになったりしながら今日も彼は人々の平和を守る!

  といった感じの作品です。

  これだけ知っていれば大丈夫です。(スパイダーセンスを始めとした特殊能力みたいなものについては少し知ってた方がいいかもだけど)何なら作中で何度も(何度も)説明してくれますので今までスパイダーマンを観たことがないという人も安心してスパイダーバースを観に行きましょう。

 

  それではここからは本編のことを語っていくのでまだ映画を観ていないという人は回れ右して劇場に行ってください。正直あのガンガンギラギラな映像だけで一見の価値はあると思います。

 

  スパイダーマン:スパイダーバース感想

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  小学生の頃、サム・ライミスパイダーマンが大好きで(3作合わせて多分100回ぐらいはみてる)でもアメイジングはそんなにハマらなくて(ヒロインが可愛くてでも死んだ記憶しかない)ホームカミングは観てない(スパイダーマンはヒーローでありながら孤独で普通の人間のようなことで悩んでそれを乗り越えていくのが魅力でさあ、それを別のヒーローと一緒に乗り越えていくようなのはなんか違くない?とか観てないくせにほざいてる)僕ですがスパイダーバース、素直にメチャクチャ面白かったです。

  この作品の予告を初めて見たときは正直「いろんな世界からスパイダーマンが集結する所謂お祭り映画か……」なんて思っていたのであまり食指は動かなかったのですが「どうやら単純に映像作品としてぶっ飛んでいて凄いらしいぞ……」ということで観たほうがよさそうだなあと思い劇場へ足を運びました。

  実際にアニメ的、更に漫画的表現も満載の3D作画での映像は凄くて、ヌルヌル動くだけではない、寧ろ2D作画のようにメリハリのある動きをみせる画面は攻撃的な色彩も合わせてかなり強かったですね。

  2回観て2回目ではIMAX 3Dでの鑑賞だったのですがガンガンギラギラドッカンバッコンで凄かったです。語彙力がなくてごめんなさい。個人的にED映像は本当に3Dでの鑑賞が最高でした。ガンギマリでした。

  映像に関しては様々なインタビューやメイキング映像が存在しているのでここでは物語の面を中心に語っていきたいと思います。

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  先ほどこの作品を「お祭り映画と思っていた」と言いましたが結論から言うとそんなことはなくて、かなりしっかり主人公の少年であるマイルスくんの成長物語として完成度の高い作品であったと思います。

  主人公のマイルスくんは正に思春期真っ盛りの少年です。親への小さな反抗、環境の変化、エリート校での生活。そういったところでのストレスが積み重なっているのでしょう。彼が序盤で生き生きとしているのはヘッドホンをして音楽で自分の世界に閉じこもっているとき、街中にステッカーを貼り付けて自己表現をしているとき、そして叔父のアーロンの元へと逃げ込んだときです。

  アーロンは恐らく元々アウトローなところがあってマイルスくんのような思春期少年にとっては心の拠り所であったことでしょう。グラフィティーアートのシーンで壁に描かれるのは学校の課題への反抗心そして空洞の自分です。その出来に満足して写真を撮って更にはスマホの壁紙にしてましたね。思春期ですね。思春期なんですよほんと。

  そんなとき何だかあからさまに怪しいクモに噛まれてマイルスくんはスパイダーマンとしての能力を手に入れるわけですがこの時のクモ、1回目観たときは「何でこんなに恐怖演出みたいになってるんだ?」とか思っていたのですが、単純に他の世界からやってきてバグっているという表現でしたね。あの装置がなければこの世界のピーター・パーカーは死ななかっただろうけど、あの装置がなかったらマイルスくんがスパイダーマンになることもなかったと思うと何だか運命的ですね。

  そんなこんなでここからマイルスくんは偉大な能力に伴った大いなる責任を背負い、ヒーローとしての戦いに飲み込まれていく……、かと思いきやそう簡単にはいかないんですよね。あのピーター・パーカーですらおじさんの死があるまでは金稼いで女にいいところを見せることしか最初は考えていなかったわけで、今作のマイルスくんはまだ中学生。目の前で偉大なヒーローの死を目撃したとしてもいきなりヒーローにはなれません。

  そりゃそうですよ。中学生ですよ?中学生なんて友達と下ネタ話してゲラゲラ笑ってたまに自分の世界を構築して妄想に勤しんでノートには自作ポエムを書きまくっているような生き物ですよ?いくら変な能力手に入れたからといっていきなり命をかけて戦いに赴くなんて普通はできませんよ。妄想の中でならよくやりますけどね!全部僕のことですね、はい。

  それでもマイルスくんは最終的にヒーローとして戦いへと赴きます。

  それは叔父であるアーロンの死をきっかけに。

  アーロンの元はやはりマイルスくんにとって最後の逃げ場所として描かれています。

  アーロンの正体が発覚する直前、スパイダー仲間が集結した場面でマイルスくんは力がまだ分不相応であると判断され、強いストレスを患うシーンがあります。それにより彼は透明になってその場を去りアーロンの元へ赴くわけですが、ここは序盤の学校内での様々なストレスにより退学を望んでいる(=透明になりたい)シーンと重なります。その時も彼はアーロンの元へと逃げ込みました。

  つまりマイルスくんの透明になる能力。クモとしてのカモフラージュ能力であると同時に、思春期特有の消えてしまいたいという感情の現れと捉えることができます。実際にこの時点で彼が透明になれるのは恐怖やストレスを感じた時だけです。

  更に言えばもう一つの固有能力である電撃も(これも元ネタはしっかり実際のクモが由来なのですが)同じように思春期特有の感情として捉えることができるかと思います。感情が昂りすぎた中学生は常に帯電状態で危なっかしいですからね。

  アーロンの正体を知ったあたりのマイルスくんは正に感情も能力も等しく制御できていない状態なわけです。 でも中学生だもん、それが普通だよ……。f:id:zisub56-56:20190320111604j:image

  それでも彼の周りにはそれこそ同じような境遇をくぐり抜けてきた心強い仲間がいて、更に今まで真に向かい合うことを避けていたであろう父親との向かい合うことができない壁越しの会話(←このシーン最高)を経てマイルスくんは戦場へ戻る決意をするわけですが、ここからですね。物語が正に反転するのは。

  ここまで長々とマイルスくんの思春期特有のストレスや感情について語ってきましたが物語的にここまでは"スウィング"。マイルスくんは文字通り揺さぶられてきたわけです。感情に揺さぶられ、能力に揺さぶられ、周囲の人間に揺さぶられ……。「満腹の時に長距離スウィングは無理」みたいなセリフもありましたが色々と一杯一杯のときに揺さぶられるのは確かに勘弁願いたいものです。

  しかしここからは揺さぶられるのはもうおしまいです。確固たる意志を持ってマイルスくんは跳躍し、世界と、そして物語が反転していきます。

 

  というところでようやくタイトルの「スウィング、跳躍、反転、思春期」の部分を回収できたので続きはまた後で書きます。寝ます。おやすみなさい。